新しいTERRAZINE

The new TERRAZINE

WiiとOperaが開く、寝たきり老人のインターネット

TERRAZI2007-06-30


インターネットチャンネル ブログでエピソード紹介コンテスト♪
がChoose Opera 日本支部で行われているのだが、残念ながら締め切りまでにWii本体を入手することが出来なかった。そこで、参加要項とは外れてしまうが、「もしWiiインターネットチャンネルがあれば、こんな風に使いたい」という文章を書いてみる。
余所様に投稿する文章なので、いつもの「ワシ」という一人称ではないが、ワシの話だ。

寝たきりの祖母

私は北九州出身で、今は鹿児島で生活している。鹿児島には母親の実家があり、祖母と長男・長女の一家が三世帯住宅で暮らしている。祖母は10年ほど前に脳卒中で倒れ、要介護レベル5の寝たきりの生活をしている。寝たきり老人の介護は大変だ。今は長女と長男の嫁が世話をしており、祖父が生きている間は3人で世話をしていたので、普通よりはかなり楽だったはずだが、それでも長女・長男の嫁ともに過労で倒れ入院した。祖父は5年前に亡くなった。

「死んでしまえばいいのに」と思った

祖母は倒れた直後、体は自由に動かせないものの、会話は普通に出来、リハビリにも取り組んだ。「情けない。カネばかりかかって」と泣いていた。しかし脳の「やる気」を司る部位に障害が残ったため、段々とリハビリへの意欲を失い、会話もほとんどしなくなった。退院し自宅療養するが回復の見込みはなく、前述のように家族への負担は重くのしかかった。
私は「こんなことなら死んでしまった方が幸せではないか」と何度も考えた。しかし、祖母は笑うのだ。私が祖父としている馬鹿話を聞いて「ぶーっ!」と大きな声で笑うのである。寝たきりだからといって、意識がないわけでもボケているわけでもない。祖母は私たちの会話を聞き、考え、感じている。それを出力することが困難なだけなのだ。
だから私は、仕事のこと、遊びのこと、ネットのこと、とにかくなんでも祖父と祖母の前で、面白おかしく話すようにした。ウケたときは嬉しかったし、こっちが一生懸命話してるのに、気が付いたら寝てたときは拍子抜けしたりもした。

祖父が死んでから、祖母の部屋に居るのが辛くなった

話し相手だった祖父が5年前に亡くなった。葬儀は斎場で行い、祖母は出席できなかった。祖父は85歳まで現役で米屋を営み、とても元気だった。だから倒れた祖母より先に逝ってしまうとはとても思えなかった。寝たきりの妻を置いて先に死んでしまうというのはどんな気持ちだろうか。考えると胸がつまった。祖父の代わりになるべく祖母のそばにいようと思った。
しかし部屋にいても話し相手が居ない。長女と長男の嫁は家事で忙しいし、長男は物静かなタイプなので話が続かない。次第に祖母の部屋に居るのが辛くなった。
来る日も来る日もベッドの上で天井をぼーっと見ている祖母。彼女のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)をどうにかして高めてあげたかった。体調の良いときは公園に出かけたり花火大会に連れていったりした。だがやはり大変で、祖母も疲れてしまい、あまり楽しめない。
ならば部屋の中で出来ることをと、ノートPCを使わせてみようと考えたが、左半身麻痺で、右手もあまりうまく動かせない祖母には難しかった。

WiiOperaインターネットチャンネルに一筋の光明

ここでWiiである。Wiiならばマウスのように細かい操作ができなくても、リモコンで見たいものを指し示すことが出来る。リモコンは4つまで使えるから、大画面TVを設置すれば、祖母を輪の中心してに孫やひ孫、家族みんなで楽しむことが出来るし、祖母がうまく操作できない時に誰かがアシストしてやれる。文字が画像が小さくて見にくいページも、Operaなら自由に拡大できる。キーボードが繋がれば、さらに使い道が広がるだろう。PC版のように音声操作ができるようになれば言うことなしだ。
これが出来るなら、Wiiと大画面テレビなんて安いものだ。でも「無駄遣いだ」って怒るだろうな、ばあちゃんは。電化製品使わないときはコンセントから抜くような人だし。そいや、ハンマープライスの時も怒ってたし(笑)