新しいTERRAZINE

The new TERRAZINE

「何故」ヘリウム入りビニール袋で窒息死したのか?

ひたちなか市の県立勝田工業高で文化祭の準備をしていた3年の大子町下金沢、石川仁志君(18)がヘリウムガス入りのポリ袋をかぶって死亡した。筑波大での司法解剖の結果、死因は「酸欠による窒息」と分かった。
石川君は25日午後4時50分ごろ、玄関前で装飾用の風船を膨らませていた男性教諭と生徒のところに姿を現した。ヘリウムガスで膨らんだ黒いポリ袋(容量45リットル)を教諭から受け取り、「ヘリウムを吸うと声が変わるんですよね」と話したという。午後5時ごろ、約90メートル離れた校舎脇の道路上で、頭からポリ袋をかぶり、あおむけに倒れているのが見つかり、約3時間後に死亡した。袋は首に輪ゴムで留められていたという。
石川君は9月まで生徒会の副会長を務め、文化祭実行委員だった。就職が内定していたという。同級生の男子生徒(18)は「学校一、人を笑わせたりできるムードメーカー的な存在だった。こんなことになると思わなかった。本当に残念」と涙をぬぐった。

http://mainichi.jp/area/ibaraki/news/20071027ddlk08040465000c.html

お前ら、窒息しかけたことあるか? ワシは無い。窒息している人を見たこともない。あえて言うなら柔道の時に絞め技で「落ちる」のを見たくらいか。あれは血流が止まるんであって窒息じゃない。これも違うけど、「過呼吸」に陥った子なら見たことある。あれってのは、すごく息苦しくて、それでまた息を吸うもんだから、さらに過呼吸になるという悪循環らしい。だからビニール袋を口に当てて、一度吐き出した息をまた吸い込むことによって対処する。ワシの窒息のイメージは、そんな「ゼェハァ」と苦しい息のイメージだったのな。だからヘリウムのポリ袋に頭突っ込んでも、「苦しくなったら外せばいいやん」と思った。多分彼もそう思ったのだろう。そしてみんなを驚かそうと、ポリ袋をかぶった。

酸素10%の空気は、「10%酸素がある」のではなく「酸素を6%奪われる」こと

酸欠ってどのくらいの酸素濃度で発生するか知ってるか? 16%だそうだ。空気中の酸素濃度が20%くらいっての知ってると思うが、そこからたかだか5%ぽっちで酸欠だってさ。

出てくるガスの酸素濃度は個人差もあるがおよそ16%であり、これが空気中の21%の酸素と濃度勾配に従って交換される。一回でも酸素16%以下の空気を吸うと肺胞毛細血管中の酸素が逆に肺胞腔へ濃度勾配に従って引っ張り出されてしまう(即ち、極論例として酸素10%の空気は、呼吸にとっては「10%酸素がある」のではなく「酸素を6%奪われる」空気ということ)。 更には血中酸素が低下すると延髄の呼吸中枢が呼吸反射を起こして反射的に呼吸が起こり、呼吸をするとさらに血中酸素が空気中に引っ張られると言う悪循環が起こる。従って酸素濃度の低い空気は一呼吸するだけでも死に至る事があり大変危険である。

酸素欠乏症 - Wikipedia

ワシはこれを読むまで、「16%くらいなら「息が苦しいだけで、たくさん呼吸すれば何とかなる」って思ってた。ところが全然違ってた。

「○○をしてはダメ」で終わらず「何故ダメなのか」を学ばせろ

みんな「ビニール袋をかぶっちゃダメ」ってのは教わったと思う。窒息するからと。でも「何故、どのように窒息するか」までは教わらなかった。それは当たり前で、こういうのを教わるのは幼児期だから、そこまで言っても理解できないからだ。で、そのままずっと「ビニール袋をかぶっちゃダメ」って事だけ刷り込まれて、「何故」かを学ぶ機会が無かった。もし、ワシが彼の立場だったら、みんなを楽しませるために、同じ事をしていたかもしれない。だって、ヘリウムのスプレー缶を思いっきり吸っても、なんともならないじゃないか。*1
そこで思うのだが、小学校高学年くらいで、「酸欠実験」をやらせるのはどうだろうか。ビニール袋にヘリウムなりの窒息ガスを充填し、中に実験動物を入れ、あっさり死ぬのを観察させるのだ。「残酷」? バカ言ってんじゃないよ。こういうことをキッチリ体に覚え込ませないから、防空壕でたき火して4人も死んじゃうんだよ。
この事故で鹿児島市防空壕を全部埋めることにした。しかし、それは間違っている。記事中にもあるように、『防空壕に入るな』ではなく『火を使うときには何に注意すべきか』のはずなのだ。徹底した過保護と、行き過ぎた責任追及の結果が、これらの窒息事故ではないか。

「危険な場所は社会の中にいくらでもあり、そこから子どもを遠ざけるだけでは問題解決にならない。冒険も含めた生活体験を通じ、子どもの危険回避能力を育てる工夫が大切だ」

2008年5月30日追記

先生は不起訴処分になったそうだ。