新しいTERRAZINE

The new TERRAZINE

NTT等が描くバラ色の未来は、わずか直径数センチの光ケーブルが支えている

まずは下の映像を見てくれ。10分超と少々長いが、良くできてるから。


http://youtube.com/watch?v=JfrK4W0gD3Q
2010年、そのとき人々の暮らしはどのように変化し、モバイル社会はどのような進化を遂げているでしょうか。
この企業CMが公開された当時、ネットは賞賛の嵐だった。「素晴らしい」「障害者と健常者が共に生きる社会」「モバイルネットワークは空間を超越する」等々。確かに素晴らしいのだが、ワシはどうにも違和感を感じて、手放しに喜べなかった。その違和感が今日、現実のものとなった。

きょう午前、鹿児島県頴娃町で県道の工事中、誤って通信ケーブルを切断してしまうトラブルがありました。この影響で、種子島屋久島鹿屋や薩摩川内などで現在もインターネットが使用できなくなっています。
NTT西日本によりますとけさ9時16分頃頴娃町青戸の県道の工事現場で業者が誤って2系統の通信ケーブルを切断してしまいました。このケーブルと種子島屋久島方面の海底ケーブルがつながっていたことから種子島屋久島地方のおよそ2万1000世帯で正午すぎまでのおよそ3時間、電話がつながらなくなりました。なお、電話は正午すぎに復旧しました。
また、この影響で通信障害が出たため、空の便で鹿児島と種子島屋久島を結ぶ5便が欠航したほか気象台への種子島屋久島からの気温や風速などのデータも欠落しました。
さらに、ケーブルが切られた場所にインターネットの通信ケーブルも通っていたため、このケーブルを利用している種子島屋久島、鹿屋や薩摩川内などで現在もインターネットが使用できなくなっています。インターネットはきょう午後7時頃復旧する見込みだということです。
NTTなどの通信事業者が描くバラ色の未来など、テロリストでも何でもない、ぼーっとした土木作業員や、クレーン船でぶった切られるような脆弱なものなのだ。
恐ろしい。本当に恐ろしい。種子島屋久島は離島だが、この3時間、通信的にも完全に孤立状態だったのだ。「携帯電話があるじゃん」バカかお前は。携帯が無線通信しているのは基地局までで、そこから先は通常の光回線だ。ワシの職場でも電話・専用回線ともに不通。衛星電話のみが連絡可能手段だった。ケーブル2本で通信途絶。飛行機5便欠航。鹿児島の離島でさえ、これほどの影響。もし羽田や関空の海底ケーブルが切断されようものなら、どれほどの事態になることか。
気象衛星ひまわり』でおなじみの『MTSAT』。正式名称「運輸多目的衛星」と言うくらいなので、気象観測の他に、航空管制の役割も担っている。このおかげで、これまでに考えられない密度で航空機を運航できるようになる。(参考:MTSAT導入の効果)リンク先のイメージ図を見て、ぞっとしないか? 確かに衛星も2機、地上局も2局ありバックアップは万全に見える。でも地上回線は? 映画ファンなら『ダイ・ハード2』を思い出すことだろう。
怖いのだ、怖いのだよ。ワシは技術者だから、技術は人を幸せにすると確信しているし、そうでなければならないと思っている。だが、高密度化されたネットワークへの依存は、果たして人にとって本当に幸福なことなのか。考えてしまうのだ。