新しいTERRAZINE

The new TERRAZINE

自殺所


 山梨県鳴沢村のコンビニ店駐車場で28日夕、同店アルバイト店員で看護専門学校1年の渡辺亜都美さん(19)が刺殺された事件で、富士吉田署が逮捕した東京都足立区の無職の平林勝(45)は29日までの調べに「樹海で自殺しようと思って来たが、死にきれなかった。人を殺して刑務所に入れば生活ができると思った。男だと抵抗されるので、女であれば誰でもよかった」などと供述した。
 男は「ナイフで刺した」と大筋で容疑を認め、渡辺さんについては「面識がなかった」と話している。供述には意味不明な点があり、同署は刑事責任能力の有無を慎重に調べるとともに、逮捕容疑の殺人未遂を殺人容疑に切り替え、送検する方針。また同日、遺体を司法解剖し、詳しい死因を調べる。
なんというか、無力感だけが残る話だ。必死で働く気もない、本気で自殺する気もない(本気だったら富士の樹海なんか行かずに自分の部屋で首つる)、自分より弱い者に手をかける。パーフェクトだ。こういう人間の前には、法も正義も刑務所も、全て無意味だ。誰も彼を救えはしない。彼自身の判断力で考えた「自殺」という方法がベストだったのだろう。しかし彼のようなヘタレにはそれすらできない。それでも富士の樹海まで足を運ぶことは出来たのだから、そこに彼の思いを達成するのを手助けする施設を作ればいい。すなわち「自殺所」の設立を提案したい。
万全の体制を持って自殺を支援する。そこで自殺することは不名誉ではなく、崇高な死であるようにする。遺体は臓器移植や研究に使われる。自殺という呼び方すらそこには存在しない。献身・献体ならぬ、「献命」である。これ以上ない素晴らしい死を演出するのだ。
私は何も「ダメなヤツは自殺しろ」と言っているわけではない。できれば自殺はしない方がいいと思う。だが、死にたがっている人を救うための、一つの方法として用意されても悪くはないと思うのだ。