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気象予報士なんてイラネ、IBM天気予想システム「ディープサンダー」


チェスの世界チャンピオンを打ち負かせたことで有名なコンピュータープログラム「ディープ・ブルー」の開発を行ったIBMワトソン研究所のディープ・コンピューティング研究グループが、新たに解像度1kmの「ディープサンダー」という数値天気予想システムを開発した。IBMではこのシステムを用いることにより1km四方ごとの天気を予報することができると述べている。
このシステムの大きな特徴は天気予想システムが今後48時間の天気の変化を3DのCGアニメ化して出力できるところにある。顧客の細かな要望に合わせて顧客ごとに異なった地域の天気予報をCGアニメのデータとして生成。それを電子メールなどで直接、その顧客のPCや携帯電話に送信することで顧客はいつでもどこでも最新の天気予想を入手することができるように工夫がされている。
まだ、製品化には時間がかかりそうだが、こういったプログラムが実用化されれば気象予報士はお払い箱になるかもしれない。
「もう気象予報士は必要ありません」なんて過激なタイトルが付いているけど、全く持ってその通りだと思う。現在、気象予報士は6,098人もいるそうだが、そのうち6000人はいらないだろうね。結局のところ気象予報というのは「物理シミュレーション」なわけで、一人の人間の天才的に優れた予想技術よりも、総当たりで計算しまくるコンピュータの方が結果的に有利だ。カスパロフをディープブルーが破ったように。
気象予測で人間が有利なのは、初期値が正確では無いことだ。1kmメッシュの予想が出来るからといって、1kmメッシュの観測が出来るわけではない。不正確な初期値から曖昧な予想をするのは人間の方が得意だ。これを克服するため、わざと誤差を与えた複数の初期値から計算された結果の平均値をとる「アンサンブル予報」という手法も採用されている。
最終的に予報士に求められるのは、これらのコンピュータ予測と実際の天気(実況)との差から、目先の予報を修正することに比重が置かれる。気象庁のコンピュータ予測(数値予報)は東アジアをカバーする領域モデル(RSM)が1日2回、日本周辺をカバーするメソモデル(MSM)で1日8回しか計算されない。夕方5時予報の初期値は朝9時のもので、8時間も経過してしまう。この8時間の差を埋めているのが予報士だ。このセンスが無く、気象庁の予報そのままだったり、レーダーエコーの動きを単純に外挿するだけのような予報士は「ボット以下」であり、「人間がわざわざやる程のものじゃない」。そこで「ディープサンダー」の出番ってわけだ。

実稼働中の「ディープサンダー」の様子

上は公式トップページだが、英語ばっかでよくわからん(当たり前か)。なので、画像メインのデモンストレーションページを見てみよう。

cbクラスターの3次元画像。これは萌える!(←変態) んが、一般人が見ても、あんまり面白くないかもしれないので、実際に稼働している様子を見てみよう。
http://services.alphaworks.ibm.com/deepthunder/run/
「アルファワークス」と言うくらいなので、いつでも見れるわけでは無いのかもしれないが、面的にも時間的にもかなり細かい情報が提供されている。が、やはり精度的には明らかに補間・平滑化が見えて取れ、まぁこんなもんだろうなぁとも思える。

今日は残念ながらどこも晴れており、データ的には面白くないが、雲の高度と密度のグラフが面白い。ウィンドプロファイラ 高層断面図を足した感じかな。13km付近より上に真っ黒な雲があって、なんか凄く天気が悪そうに感じるんだけど、実際はすじ雲や飛行機雲のような薄い雲で、雨を降らせるようなものじゃない。本当は1.5km付近にある赤黄の部分の方が雨を降らせる雲だ。

脱線:飛行機雲と温暖化

この段落は話の筋からはずれるし、ちょっと見て思ったことなんで、真に受けないで欲しい。
13km付近の雲は巻雲って言うんだけど、これが現れるのはせいぜい10kmくらいまでで、13kmってのはかなり高い。単なるノイズか、実際に雲や湿気があるのか分からないんだけど、もしあるなら、やっぱこれは飛行機雲の影響なんじゃないかと。
何を突拍子もないことをって思うかもしれないけど、これって一部の気象学者も研究してることなんだよね。で、さらには地球温暖化の一因かもってNASAも言ってたりする。

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これは2004/04/30の朝に宮崎市で撮影されたものだけど、7本も飛行機雲が写ってんのね。ど田舎の宮崎ですらこうなのよ? で、ニューヨークに行ったときに、もう凄い渋滞なのよ。飛行機が。「離陸・着陸待ちってレベルじゃねーぞ!」ってくらいスゲーの。そん時思ったのね、こんだけ飛んでりゃ、そりゃー温暖化もするかもって。温暖化ガスといえばCO2ってイメージが強いけど、実は水蒸気が一番影響あるのさ。
じゃけん、ディープサンダーでも地球シミュレーターでも、久多良木セルコンピューティングでもいいけん、その辺研究できたら面白いのになってね。また脱線するけど、石油が枯渇したらジェット機ってどうするんだろ? 水素積んで飛ぶのかなぁ?

NASAの研究をIBMが計算してGoogleが出力

って実現したら、世界最強タッグの誕生じゃね?

これなんか見たら、ホント気象予報士どころか、気象庁すらイラネんじゃね? って感じだよな。あっちは「産官学」のコラボを本気でやってんのに、こっちは弱小気象庁と、しょっぱい民間気象会社と、タレント予報士の笑えないお笑いトリオだしなぁ。
IBMの狙いは自前で予報モデルを持たない後進国への売り込みだよな。自分とこじゃモデルも開発できないし、スーパーコンピューターだって買えない。そこをアウトソーシングしようってわけだ。ちゃんと考えてるよなぁ。我らがニッポンも世界最速の座を取り返すためのプロジェクトが動いているみたいだけど、それでどう商売するってのが全然見えないよな。これだから「理系バカのオナニー」とか揶揄されちゃうんだよ。もっと気象庁とか自衛隊とか演算パワーが必要なとこと組んで、バリバリやれよってんだ、バカが。

おまけ:きれいな空の写真

なんか写真がウケたので、ワシのフォトログから何枚か。


あれ? もしかして直リンできない?