新しいTERRAZINE

The new TERRAZINE

優れた製品とは

受け入れられなかった高性能洗濯機

ここは日本だから、日立とか東芝とかの洗濯機がよく売れている。そんな中ノルウェイ産の洗濯機が一部で人気を博している。その洗濯機は国産のものと違って洗い方が違う。だから汚れが良く落ちる。水や洗剤も少なくて済むし省電力なんだ。さらには操作性が良くて細かい設定ができる。だからマニアは以前から注目していた。でも、細かい設定ができる分、初心者向けじゃない面があった。しかも完全に日本語化されていない部分があって、一般の人は手を出さなかった。
先日、その会社が10周年記念で大幅値下げをした。これまで見向きもしなかった層が「それならば」と例しにお店で使ってみた。最初はとまどったけど、その性能・使いやすさを実感して買った人も少なくなかった。メーカーも喜んだし、古くからのファンも喜んだ。
で、実際に家でじっくり使ってみると、あちこち不具合がある。中でも致命的なのが「洗濯機が完全に止まる前に電源を切ると、設定が壊れてしまう」というものだ。運転中のランプは消えているのに、実際はまだ動いているらしい。以前から指摘されている不具合なのに直す気配がない。乾燥機オプションを付ければ、トレイに赤いアイコンが表示されるらしいのだが、乾燥機に別のメーカーのものを使っていたら当然表示されない。中には「そんなの電源監視ボックスを付ければ済むこと」とか言い放つ者までいる。この洗濯機を使うなら、そのくらいの手間は当たり前らしい。
気を取り直してメーカーに報告しようとしたら、そこは英語のページ。しかもアレコレと注意書きが多くて嫌になってしまった。これだったら、前の洗濯機の方がいいや。
メーカーはその程度のサポート意識しかなく、ユーザーは鼻持ちならない信者ばかり。かくして、そのノルウェイ産洗濯機は、高品質・高性能にも関わらず、日本市場では受け入れられなかったのである。

パワーユーザーにかいま見る鼻持ちならなさ

上の話は「Opera」というWebブラウザを洗濯機にたとえたものだ。発端はA blog? with Σαιτωの10/28。元々はTclockという便利なソフトの話なのだが、コメントの流れでOperaの話になった。
Operaの不具合を回避するのに「こういう方法があるよ」というのはアリだ。だが、それが当たり前のように言われるのは完全に間違っている。あくまでも小手先の回避法であって、根本的な解決ではないからだ。
日本のOperaの歴史は「小手先」の歴史と言ってもいい。日本語を通すためにローカルプロクシを使ったことから始まり、パッチ当てやuser.cssなど、ずーとそうだった。そこまでして使うほどOperaの素姓が良かったからだ。これら「パワーユーザー」の努力によって、設定ファイルを書き換えたり、パッチを当てる程度のスキルの人でもOperaを使うことができた。この歴史がなかったら、今の日本に於いてのOperaは無かっただろう。
だが、時代は変わった。日本語版が提供されるようになり、日本支社も発足した。たくさんの新規ユーザーが入ってきた。それなのに「パワーユーザー」の意識は昔のまま。「ini書き換え当然」「英語ぐらい読め」それが当たり前と信じて疑わない。これはもはや老害と言っていいだろう。

届くことのない情熱

パワーユーザーへの悪口ばかり言ったが、OperaOperaらしく使う上でパワーユーザーの力は欠かせない。パワーユーザー運営の熟読必須サイトがたくさんある。だが、それらはあちこちに分散していて、最もそれを必要としている初心者が到達することが難しい。ポータル的なサイトが無いのだ。更新頻度の高さから「OperaWiki」がその役割を負っているが、最新版を追いかける傾向が強く、初心者向けとは言い難い。やはりここは公式の充実が求めらる。力は分散するよりも集中した方が、より強力なのは言うまでもないだろう。

これ一冊で全部入り「公式ガイド本」の発行を

そして集約した情報を一冊の本にすべきだ。やっぱり紙の本で読むのが一番わかりやすい。CD-ROMには便利なスクリプトや設定を詰め込んだ「全部入りバージョン」を収録。サポートツールも全部入りでランチャー付き。これでどうだ!

優れた製品とは

高性能なのに市場に受け入られず消えていった製品は多い。その中には「孤高」を気取って、自らの優位性をわかってもらう努力を怠ったものが少なくない。曰く「いいモノを作っていれば、いつかわかってもらえる」美しい理想だが、それは幻想だ。一品モノの世界ならともかく、数で勝負の世界では通用しない。優れた製品とは、高性能かつ受け入れられやすいものだ。どんなに高性能でも、それを使ってもらえないのであれば、存在しないのと同じだ。「わからない機能は使わなければいい」など傲慢も甚だしい。「わかりにくい機能をわかりやすくする」のが技術というものだ。
Operaはライバルに比較しても充分に高性能だ。今は営業とユーザーサポートに注力すべき時期ではないか。強力で熱烈なパワーユーザーの力を借りれば、ブラウザ戦争は再び面白くなるだろう。