新しいTERRAZINE

The new TERRAZINE

ドップラーレーダー


 近づいて来る救急車のサイレン音は高く聞こえ、遠ざかる時は低く聞こえる「ドップラー効果」。気象庁は、この効果を観測に応用した「気象ドップラーレーダー」を新たに整備し、突然発生する局所的集中豪雨の観測に使う方針だ。05年度予算の概算要求に整備費約11億円を盛り込んだ。
 気象ドップラーレーダーは、大気中の雨粒に電波をぶつけ、反射してくる周波数で雨粒の動きを観測する仕組み。豪雨をもたらす積乱雲は、上昇気流の場所で発生する。雨粒の動きから周囲の風の様子を詳細に把握し、上昇気流になっている地点を割り出す。
 国内20カ所で雨雲などを観測している気象レーダーのうち、札幌市、仙台市、千葉県柏市名古屋市の4カ所をドップラーレーダーに改良する。半径約250キロをカバーし、3〜6時間先に発生する集中豪雨の予測が可能になるという。
 同庁では「豪雨災害の軽減に役立てたい」としている。
ドップラーレーダーは大気の立体構造を観測・解析するのに大変有用な技術です。アメリカでは1996年に160機のドップラーレーダーによる観測網がしかれています。(この辺りが我が国が先進国に比べ10年遅れていると言われる所以です。)ドップラーレーダーのこれまでのものとの違いは、これまでは雨雲がどちらに動いているかは、時間を追って追跡(アニメーションさせるなど)しないと分かりませんでした。しかしドップラーレーダーでは、その雨雲一つ一つの動きが一回の観測で分かり、しかもこれまでのように平面的ではなく、立体的に捉えることができるのです。もっと簡単に言えば「これまで見えなかったものが見える」ということです。

しかし、ドップラーレーダーなら万全、というわけではありません。探知半径が現在のレーダーの約400kmより大幅に狭いのです。つまり、ドップラー化した場合、これまでの設置台数では「穴」が空くのです。これを補うためには、設置台数を増やすことが一番なのですが、気象庁気象衛星の予備さえ持てないほど貧乏なので、そんなお金はありません。そこで、これまでのレーダー観測と、ドップラー観測を交互に行うような工夫で乗り切ります。電波の制御など、とても高度な技術が要求されます。また、レーダーが使用している5.3Ghz帯は無線LANとかぶっており、非常に厳しい管理が要求されます。(普通、自動周波数制御は、受信側で行うものですが、気象庁のレーダーは送信側で行っています。)
参考リンク:スラッシュドット ジャパン | ドップラー効果で集中豪雨を予想