新しいTERRAZINE

The new TERRAZINE

真剣勝負

午後5時頃、「近鉄バッファローズの○○です。今年もお世話になります。」と、はつらつとした、それでいて礼儀正しい挨拶の電話を受けた。今日は2月1日。プロ野球のキャンプインの日である。今年宮崎はダイエー、西武、近鉄、巨人、ヤクルト、広島の6球団が春季キャンプを行う。球団関係者として天候が気になるは当然のことだろう。ダイエーファンの私としては、あまり他球団にがんばってもらっては困るのだが、プロ野球ファンとして選手にはできるだけよい環境で練習してもらいたい。今夜から朝の内にかけて雨が予想されている。自然「明日の練習に支障がないか?」という視点で解説にも熱が入る。今年も面白い試合をたくさん見せて欲しい。心から願うものである。
同じ日の午後10時頃、呂律の回っていない、おそらくは酒を飲んでいる農家と思われる男性から、突風についての予想を聞かれる。突風というのは、読んで字のごとく突然吹くから突風なのだ。それを「(ビニール)ハウス」は飛ばないか? と聞かれても答えようがない。こちらは彼のハウスがどこにあるのか、どのくらいの強度なのか、なんの情報も持っていない。もし、その情報が与えられて「飛ぶかもしれない」と答えたら、彼はハウスの補強を、夜10時、真っ暗で雨も降っている中、行うのだろうか? 違う。彼はすでに晩酌をしており、そんな気は全くない。ただ気象台に電話をすることで、「自分は天候を気にかけた」ということにしたいだけだ。もし、本当に補強をするつもりならば、17時の予報が発表された後、すぐに電話をするはずではないか。真剣に気象のことを聞きたい人間が、後ろでテレビをつけたまま電話するだろうか? メモも取らず同じ事を何度も聞き返すようなことをするだろうか?農業という自然を相手に、ある意味で「戦いを挑む」仕事ですら、プロ意識のない「ど素人」でもできる時代になったようだ。
私もプロであることを常に意識している。だから「てめえのハウスがどうなろうと知ったことか!!」なんて事は決して口に出すことはない。だが、「真剣勝負のプロ」に対応する時と同じだけの気持ちを持つことはできない。こちとら朝5時の予報を出すために、夜中の1時から作業やってんだ。