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Wikipedia「ダム」

フリーオンライン百科事典「Wikipedia」。辞典としてはもちろん、読み物としても異様にマニアックで面白い項目があることで人気だ。私も仕事の関係でGoogleアラートに「気象」「防災」「地震」といったキーワードを入れて、新規の書き込みをチェックしている。それにひっかかったのが、この「ダム」だ。中でもダム建設の問題を綴ったこの段落は秀逸。是非読んで欲しい。


ダム建設の是非を論じる場合、最も重要となるのは流域の利益に叶うかどうかであり、観念的な感情論は排さなければならない事は言うまでも無い。だが、始めにダムありき・ダム反対ありきの対立状況が部外者によって攪拌されている現状では、流域主体の冷静な意見交換が出来にくい状況にある。

治水案 水没世帯数
旧ダム案 220
堤防嵩上げ案 670
堤防(川幅)拡幅案 640
川底掘削案 860
放水路案 570

足羽川ダム建設の代替として出された案のどれもが元のダム建設案よりも環境負荷が大きい事が判明。2004年(平成16年)7月の福井豪雨で福井市を始め足羽川流域は甚大な被害を受けたが、新足羽川ダム+堤防整備を実施していた場合、豪雨による浸水被害自体が起こらなかったという分析がなされた。これにより足羽川ダムは福井市等流域自治体・住民の強い要望を受け、治水専用ダムとして部子川に2006年建設を再開している。

確かにこういった公共工事は無駄遣いや不正の温床になっていることも少なくないだろう。それらを追及するのは大事なことだが、まっとうな根拠に基づかない議論は不毛なだけでなく、このような大きな損害と犠牲を伴うのだ。
「地球に優しく」という感情は大切で大事にするべきだ。だがそれだけではダメだ。心で感じ、頭で考え、体で実行する。そのことを改めて考えさせられる名文章だ。是非読んで欲しい。