新しいTERRAZINE

The new TERRAZINE

儲からないものは切り捨てられる。それが現実

「他人事」の防災の日

去る9月1日は「防災の日」だった。東京都の訓練に米軍が初参加したのがニュースなどで話題になったので、知っている人も多いだろう。「住民の安全を守るための防災訓練に米軍はいりません」などと言う人が居たそうだが、大災害という「有事」の時に、米軍の力を借りれるのは心強いと思うのだが。まぁ、こういう人たちはいざ災害が起きたときは、「米軍は何もしてくれなかった」と文句を言うに決まっているのだけど。
いきなり脱線した。まぁ「防災の日」といっても、それで避難場所や避難グッズを確認したりしたひとは少ないだろう。なぜなら「他人事」だからだ。誰も自分の身に災害が降りかかるなんて考えない。他人事だから「米軍うんぬん」とか言えるのだ。

誰も使えない「緊急警報放送

NHKでは毎月1日の正午前に、「緊急警報放送」の試験放送を行っている。「ピロピロピロ〜」って音が出て、「テレビのスイッチが自動的に入ります」ってアレだ。さて、あなたはこの「テレビのスイッチが勝手に入る」現象に一度でも遭遇したことがあるだろうか? もしそうなら、あなたは1000人に2人の「幸運な人」だ。


 大災害時に放送局からの信号で自動的にテレビやラジオの電源が入る「緊急警報放送(EWS)」。放送各局が電波を出し続け20年を超えるが、これに対応するテレビは、実はほとんどつくられていない。防災関係者は、地上デジタル放送開始を契機に普及が進むことを期待したが、非対応のテレビが出荷され続けている。
 総務省の調べでは、85年以降のカラーテレビ、ラジオのうち、普及率0.2%という計算だ。
 総務省地上デジタル放送開始にあたり、技術基準を検討。EWSの仕組みを残したが、自動起動機能の義務化はなかった。
 製造をためらう理由として、各社は待機電力の問題を挙げる。「市場から強い要望はない」(三菱電機)、「価格が上がってしまう」(船井電機)という声もあった。
 東海地震に備える静岡県は昨年、自動起動地上デジタル受信機の必須機能とすることを「制度化」するよう国に要望した。防災政策課は「業界団体と国で話し合い導入して欲しかった」。総務省地上放送課は「自主性にゆだね、義務化は難しいが、メーカーに働きかけていきたい」と話す。
災害時にテレビやラジオから自動的に情報が流れる。これほど有効な防災情報伝達手段はないのだが、普及しない。なぜか?「儲からない」からだ。「待機電力」?モデムやルーター、HDDレコーダーなどのデジタル家電が24時間動いている現代で、たかがチューナーの消費電力など知れたもの。こちらのページの調べでは、待機消費電力は1W程度で、電気代も年間約200円程度。「省エネ」を言い訳にしているに過ぎない。第一、地デジの普及に必死な総務省が、それを妨げる原因になる機能を「付けろ」なんて言うはずがない。
じゃあ旧来のアナログテレビ・ラジオはどうかというと

松下電器だけではない。国内で生産している緊急警報放送対応のアナログテレビ・ラジオは1機種も存在しない。販売しているのも見たことがない。あなたがもし緊急警報放送を使おうと思ったら、ラジオを自作するしかない。しかもその作り方は廃刊になった科学雑誌くらいにしか載っていないそうだ。
「儲からない」という事実の前には「国民の生命」など二の次なのだ。

非常の時には役に立たない「非常口」

ホテルに泊まるとき、あなたは非常口を確認するだろうか。場所すらも確認しない人の方が多いのではないだろうか。場所を確認しても、「本当にその非常口で避難できるか」まで確認する人はまずいないだろう。
東横インに限らず、大抵の安ビジネスでは避難通路はベッドメイクに使うシーツなどのリネン物の置き場になっている。嘘だと思うなら、実際に非常扉を開けてみればいい。従業員があわてて飛んできて「消防署には言わないでください」と何かいいものをくれるかも知れない。それ以前に非常扉自体が開かないかもしれないが。
ハートビル法でもそうだったが、避難通路など「検査の時だけ」確保できていればいい。抜き打ち検査はしないから、日にちは前もってわかる。その日にクリーニング屋に「預かってろ」と押しつければいい。この日に当たったパートのおばちゃんは大変だ。

確保されない「障害者用の部屋」

東横イン車いす駐車場が復活したって、障害者を受け入れる環境は整わない」という前提は正しいのか?
id:kanimasterさんのはてブコメント

正しいかどうか、一緒に推測しよう。東横インは徹底したコストダウンによる低料金が売りの安ビジホだ。Wikipediaによると「女性支配人を起用することなどにより、低コスト化を図っている」そうだ。*1 私も何度か利用したことがあるが、男性従業員は少なく、おばちゃんが多い印象だ。つまり、介助が必要な障害者が来ても、対応できる男手は確保できない。ハードウェアが整備できても、人間は整備できないのだ。それをしようとしたら、もはや東横インの存在価値はなくなる。吉野家バリアフリーを求めないように、*2東横インにそんなものを求めること自体が間違っているのだ。
とにかくソフト面は置いておいて、ハード整備だけは行ったとしよう。広い入り口、広い通路、広い浴室と便所が完備された、車いす対応の部屋を整備した。だが、毎日車いすの客が来るわけではない。稼働率83.1%を誇る東横インにとって、空室は「悪」である。普通の部屋が満室になれば、当然客を入れるだろう。満室なら仕方がない。車いすの人には丁重にお断りすればよい。
ここで頭のいい者は考える。「待てよ? 車いすの客に本当に満室かどうか確認できる手段はない。だったら最初から「満室」ってことにすれば、面倒な車いすの対応はしなくていいじゃないか?」かくして、「障害者用の部屋」が確保されることはないのである。
この段落は100%憶測だ。これをどう思うかは、あなたの受け取り方次第。私は前提が成り立つ程度には真実を突いていると思っている。

頭とカネは使いよう

障害者はいつでもどこでも嫌がられる、煙たがられる。人道だの言ってるバカは現実を見ろ。じゃあ、その現実とどう折り合うか。簡単だ、カネを使えばいい。ホテルならチップを払えばいいのだ。私は障害者ではないが、たった1000円のチップで驚くほど対応が変わる。宿泊料金が1000円高いホテルに泊まるよりも、1000円安いホテルでチップを払う方がずっといい思いが出来る。カネと頭は使いようなのだ。
「俺様たちは障害者様だ。お前等はサービスして当然だ」という態度の人間と、「ご迷惑おかけしますが、これで一つ」とチップをくれる人間のどちらを泊めたくなるか、言うまでもないだろう。

利益を度外視しても動いてくれる人間は居る。しかし企業はそうではない

実績に対しての優遇か、なるほど。流石だ。 だが、利益を度外視しても動いてくれる人間が居ることも忘れてはならない。
id:hashigotanさんのはてブコメント

そう。人間とは優しい生き物だ。特に自分より弱い者に対しては。だが企業は違う。企業は自分より弱い者から搾取し続けることによってしか存在し得ないからだ。人は善意で動くが、企業は金でしか動かせない。
個人、しかも障害者のような弱い個人が、企業と真正面から戦っても勝ち目はない。だから企業の中の個人を相手に戦う。こうすると御社にとって有利ですよ? こうしないと不利になりますよ? と交渉する。それには社長のような力を持つ相手でなくては意味がない。ところがバカは窓口の雑魚相手にキャンキャン吠えるだけで満足してしまう。本当に救いようがない。
いかに自分(達)が相手にとって「儲かる人間」と思わせるか。これはビジネスの基本中の基本だ。自分を単なる客にしてしまっては、ただの雑魚扱いしかされない。それがイヤならば「プロの客」になるしかない。

儲からないことは「悪」である

儲からないものはやりたくない。面倒なことはしたくない。自分に関係のないことには無関心。これが事実であり現実だ。
度々「世の中は良いとか悪いとかでは動かない。儲かるか儲からないかだ」と言ってきたが、もう一つ加えるとするならば、「儲からないことは悪である」
人を、企業を、世の中を動かそうと思ったら「儲かる話」を持ってくるしかない。儲からない話なら、動かす力を持っている人間が儲かる話を持ってくるしかない。それが政治力というものだ。

ブロガーに甘んじるな。ハッカーになれ

ただホテルに泊まって、ホテルジャンキーズの住人のように「やれ設備が、対応が」などと表面からしか見えないものを見ていては、裏に隠された真実は見えてこない。開かない非常口を開け、見えない場所を覗いて初めて真実が見えてくる。たかがビジネスホテル、たかが災害用ラジオからでも、社会を見ることは出来る。しかしそれにはハッカーの視点を持たねばならぬ。ハッカーになれ。そして真実を見ろ。あ、いけね。ワシ、ブロギガーだった(笑)

つまり何が言いたいかいうと…

チップください! 檀家様! そうしないと切り捨てらてしまいます!(誰に?)

*1:ここで「女性差別」とか言い出すと訳がわからなくなるのでスルー

*2:吉野家バリアフリー店舗は17号線上尾店だけである。「それ以外の店舗でも、車椅子のお客様に気持ちよく召し上がっていただくよう対応させていただきます。」とあるが、実際どう対応するようにマニュアル化されているのだろう?