新しいTERRAZINE

The new TERRAZINE

古典的名作は人類共有の財産

「ソフトをコピーされるのは、手塩にかけた娘をレイプされるようなものだ」とナムコ中村雅哉氏は言った。
では看板タイトルをパチンコ屋に売るのは「手塩にかけた娘を北朝鮮の女郎屋に売るようなもの」と言ったところか。

YouTubeエヴァ全話祭り

何かと話題のビデオ共有サービス「YouTube」で『新世紀エヴァンゲリオン』という10年前のアニメが全部見れると「はてなブックマーク」で話題になった。過去の名作を誰もがいつでも見ることができる。ネットワークの素晴らしさを改めて感じた。ところがはてぶのコメントでは未だに「著作権」がどうのとか言っている人がいる。一体いつの時代を生きているのだろう。
エヴァ』は10年も前の作品だ。もはや古典的名作と言っていい。もう全人類共有の財産でいいではないか。現行の法律では作者の死後50年も著作権が保護される。作品が生まれてすぐに作者が死ねば50年だが、もし作者が100歳まで生きたら、20歳の時に作られた作品は130年も経たないと権利が消滅しない。これは不公平だろう。作者の死後ではなく、作品ができてからの期間にすべきだ。そして50年というのも「秒進分歩」のこの時代には長すぎる。一本の作品が当たればずっと食っていけるのは、本当に創作者のためにはならない。現在の著作権は創作者ではなく、その周りの人間が甘い汁を吸うためのシステムになっているように思える。

愛ゆえの違法行為と、愛無き権利行使

はてぶのコメント通り、このアップロードは違法だ。真っ黒だ。でもそれで儲けようとか、創作者にダメージを与えようとかいう意志はない。そこにあるのは作品への愛だ。エヴァンゲリオンという素晴らしい作品がある。それを誰かに見せたい、みんなに見て欲しい。その気持ちが自らを利することのない違法行為へと駆り立てさせるのだ。
ビデオのなかに「NOT FOR SALE OR RENT(売ったりレンタルで儲けたりするな)」と言うクレジットが入っているものあるのに気がついただろうか。これは正規の英語版ではなく「Fansub」と呼ばれる熱心なファンが自分たちで翻訳し、自分たちで英語字幕を付けて流通させているものだ。これまた「真っ黒」だ。でも何故彼らはそこまでの労力(30分のアニメを見て、セリフを聞き取って、英訳して、セリフにあわせてタイミングを調節して、エンコードするのを想像してみろ)を払ってまで違法行為を行うのだろうか。それは見たいからだ。そこまでしてもアニメが見たいのだ。我々がハリウッド映画を半年遅れで見ることを強制され、少しでも早く見たいと願うように、彼らも日本のアニメを早く見たいのだ。そこにあるのは愛と情熱だ。その感情を権利者は「レイプ」と呼ぶ。だが、目の前にかわい子ちゃんがいるというのに、手を出すことができない。レイプしてまで欲しいと思わせてしまう権利者にも責任がある。ファンの思いを真摯に受け止めていないのではないか。
翻って正当な権利者であるガイナックスは、エヴァンゲリオンの世界観とは全く相容れないパチンコにライセンスしたり、自ら脱衣麻雀を売ったりしている。愛があるからといってレイプしてよい法はないが、「親権」があるからといって、自らの子供を虐待してよい法もないはずだ。

子供が国の宝であるように、名作は人類の宝である

だから「名作」と呼ばれる作品は人類共有の財産であるべき、というか、すでにそうなっているというのが私の主張だ。その上で権利者はもっとも優先的に作品を愛することができる。そうなって欲しいというのが、私の願いだ。

参考