新しいTERRAZINE

The new TERRAZINE

パックランドで語らせて


「続編ものはつまらない」。これはどの世界にでも当てはまる法則である。比類無き偉大なビデオゲームパックマン』でさえも、『スーパーパックマン』『パック&パル』とその呪縛から逃れることは出来なかった。
そんな中で「不思議なことが当たり前」というキャッチコピーで現れたのが『パックランド』だ。これよりスゴい続編ものを私は知らない。まるで絵本から飛び出してきたような世界。その中をたった3つのボタンで縦横無尽に走り回るパックマン。しっかりとキャラクターづけされたモンスターたち。未だにこれを超えるジャンプアクションゲームはない。
以下、その魅力を語るので、BGMでも聴きながら読んで欲しい。
パックランドメドレーogg 約900KB)

3つのボタンから生み出される驚異の操作性


パックマンは左ボタンで左に、右ボタンで右に歩く。速く叩けば速く走る。ジャンプボタンを押せば跳ぶ。歩いている時は低く、走っている時は高く跳ぶ。これ以上ないくらいシンプルでわかりやすい操作性。たったこれだけなのに、パックマン本当に生き生きとした動きをする。進行方向と逆のボタンを押しながら進行方向のボタンを叩くと、進行方向に滑りながら進む。…とりあえずやれ。こんなん文章で説明できるかバカ。

その優れた操作性を実現するために筐体を改良


それまでのコントロールパネルは筐体の下のほうに位置しており、椅子に座った状態で膝の間にあった。必然として股を開いて座らねばならず、そのため女性プレイヤーは極端に少なかった。パックランドではコンパネを膝の上に持ち上げ、コンパネの下に膝を閉じた状態で座ることが出来た。これにより操作性が格段に向上し、また多くの女性プレイヤーを生み出すことになった。今では当たり前の筐体デザインの基礎は、パックランドから始まったのである。

敵に触れたら死ぬのに、敵に乗れる


ビデオゲーム誕生から常識とされてきたゲームデザイン「敵に触れたら死ぬ」。『パックマン』も『ドンキーコング』でもそれは同じだった。ところがパックランドのモンスターは帽子をかぶっており、その上ならば乗ることが出来るのだ。敵の真上が安全地帯、この革命的なゲームデザインパックランドはとんでもないゲーム性を持つことになるのである。

性格づけられたモンスター


敵はクライドクライド・ピンキーピンキー・インキーインキー・ブリンキーブリンキー・スースーの5匹。画面上に同時に現れるのはこの5匹だけ。「スー」以外の4匹がクルマ、飛行機、UFO、ホッパーに乗って現れる。基本的にクライドが一番攻撃的で高速、順にブリンキーまで遅くなる。「スー」だけが別格で、壁などの障害物を貫通しながらパックマンをゆっくりと追ってくる。タイムオーバー時にはスピードアップし、パックマンの全速力と同じスピード追ってくる(これがまたミソ)。ではスー以外の4匹で一番怖いのは「クライド」かというとそうではない「陰気ー」こと「インキー」こそが最強モンスターなのだ。飛行機で突っ込んできても、地上にいれば平気なのだが、コイツだけは地上まで突っ込んでくる。他にも窓から子モンスターを2匹連続で落としたり、フェイントをかけてきたり。で、インキーを警戒しすぎると、存在感の薄い最弱のブリンキーにやられるのである。
4x4+1=17。たった17種で凄まじいまでにバラエティに富んだ攻撃が繰り広げられるのである。今「ゲームデザイナー」と名乗っている人たちに「敵17種類、同時出現5匹まででゲーム作れ」言ってみたらどういう反応が返ってくるのだろうか。

ゲームをプレイ=作者と会話すること


たかが「ゲームバトン」に何を熱く語っているのだ。そう思われた方も少なくないだろう。たかがゲームじゃないか。
優れたゲームをプレイすることは、そのゲームに全能力を注いだ作者と対話することなのだ。メッセージを受け取る行為なのだ。当然プレイする側も全能力でそれを受け取らねばならない。いや、自然とそうなる。だからこそ名作ゲームと言われるのである。
優れたゲームを遊んでいると、作者の顔が見えてくる。そんなゲームが私は好きだ。大好きだ。