新しいTERRAZINE

The new TERRAZINE

14歳

生徒諸君!

昨日の夜、NHK BSでマンガ「生徒諸君!」の作者の庄司陽子さんの話をやっていた。
http://www3.nhk.or.jp/omoban/main0125.html#08
このマンガ、私の妹が大好きで、釣られて読んだら大はまり。当時の少女マンガと言えば、お目々キラキラ、花しょってという感じで、私は偏見を持っていた。実際そういうマンガが多かったし、この作品も絵柄に関してはそういうところがある。
主人公の「ナッキー」は田舎から東京の中学へ転校してきた女の子。成績優秀、スポーツ万能で人気者。しかも家は大金持ちという、ちょっとあり得ない設定。当然、最初はなじめなかった。転校早々友だちになった岩崎という男の子と、授業中におしゃべりしているところを教師が注意するのだが、この教師が陰険で、ナッキーが田舎から転校して来たことを知り、問題を即答するように仕向け、彼女に恥をかかせようとするのだ。ところがナッキーはすらすらと即答してしまう。歯がゆく思う教師。ナッキーは成績優秀だが、いわゆる「優等生」ではなかった。

私の中学時代

私が中学生の頃と似ている。私も成績優秀だったが、どちらかと言えば問題児だった。気に入らない教師にはことごとく反発した。その頃から理科が好きだったのだが、その理科教師が陰険なおばさんだった。ある時、クラスの女の子が授業中におしゃべりをしていた。女教師は「ノートを取っているか?」と聞いた。当然取っているはずはない。ところが女生徒は「取っている」と嘘をついた。女教師は「先生、信じるよ?」と問いただす。うなずく女生徒。ところが女教師は「じゃあ、先生にノートを見せなさい」と言って、女生徒の元へつかつかと歩み寄る。「信じてねーじゃん!」私は怒鳴った。「信じるって言ったんだから、信じろや!」 女教師は顔を真っ赤にして、教卓に戻った。
まぁ、似ていたのはその事くらいで、後は全然似ていないのだが、それでも感情移入を促すには十分のエピソードだった。それから彼女は精一杯活動し、どこまでも真っ直ぐに、人や物事にぶつかっていった。普通ならいけ好かないヤツと思ってしまうところだが、それすら感じさせないほど、真っ直ぐだったのだ。

十四の心で聴く

庄司陽子は中学時代にこだわっていると言った。小学生はまだ親離れしていない、高校生はもう親離れしている。そのどちらでもない中学生は、最も輝ける時なのだと。田口ランディさんのトークショー宗教学者鎌田東二さんが「聴くという字は、耳へんに、十四の心と書く。十四歳の感受性で、言葉を音を受け止めることが、聴くということなのだ。」と言っていたことを思いだした。思えば私が14歳の頃も、よくもまぁあんなにパワフルだったものだとあきれるくらいだったなぁ。

体験学習の女の子達

先日の体験学習の女の子達から、感想などが書かれたアンケートが返ってきていたらしく、飲み会の時に「他は「課長」とか「予報官」とかなのに、お前だけ「てらじさん」と名前で書いてるなぁ」と言われた。他の者がクソ真面目に気象の話ばかりしかしなかったので、ちょっと毛色の変わった私が印象深かったのだろう。たった3日間で気象のことがわかるわけもない。であれば、気象の話にこだわらず、親や教師以外の大人と話す事自体を楽しんでもらおうと考えたのだ。
今の子達はとてもおとなしくていい子だ。でも、自分から積極的に何かをしようとするところは感じられない。何から何まで親や学校や教師がお膳立てしてくれるので、常に受け身なのだ。途中、担任の教師が様子を見に来たのだが、帰り際に「あなた達、迷惑にならないようにするのよ。」と生徒達に言ったのだ。「バンバン迷惑かけていいんですよ。」と私は言った。「迷惑と思うくらいなら、はじめから受け入れなければいいんです。折角の機会なんだから、いろんな事をバンバンやってもらって、私たちを困らせるくらいでいいんです。」教師は恐縮したように会釈し帰っていった。
今の子達はとてもおとなしくていい子だ。でも、それは小さくまとまっているだけで、のびのびと育っているようには感じられなかった。それは、親が、学校が、社会が、子供達を自分の都合のいいように、失敗しないように、小さく狭い場所に押し込めているだけなのだ。
とはいえ、「何してもいいよ」と放任してしまっても、彼女たちも困るだろう。ある程度のカリキュラムは必要だ。それは他の人に任せて、私は彼女らがリラックスできるように遊び相手になってやった。「気象台の印象は?」と私が聞くと、「もっとすごい機械みたいのがあるのかと思ってた。」彼女らの中のイメージは、TVスタジオのセットなのだ。「ははは、そう。意外と大したこと無いやろ? 家にあるようなパソコンばっかりやし。別にものすごい仕掛けがあるわけじゃないんよ。こうやって普通のおじさんが、たくさんの資料とにらめっこして、うんうんうなりながら作るのが天気予報なんよ。」「それはどの仕事も同じ。君たちのお父さんお母さんも、同じように働いてんのさ。」「うちに帰ったら、今日の復習とかせんでいいけん、お父さんの仕事の事を聞いてみな?」柄にもなく「大人」みたいな話もしてやった。彼女らがどんな風に感じたかはわからないが、まぁ「茶髪でロン毛の変なおっさんが気象台におった」くらいの印象は持ってもらえたようだ(笑)

十四の心を持ち続ける

彼女らに感謝するのは、十四の頃の気持ちを思い出させてくれたことだ。特に今年度は気象災害の多い年で忙しく、ともすれば、その日を乗り切るだけの毎日になっていた。十四の頃と同じようにはいかないが、少しでもあの濃密だった日々に近い一日を過ごせるようでありたいと思う。

つまり何が言いたいかというと

生徒諸君!』をまた読み返したいけど、全然そんな余裕はなく、とても十四の心なんざ言える状態じゃなくて、うがぁ!!!!!