新しいTERRAZINE

The new TERRAZINE

冒険家で音楽家 鈴木嘉和

私にとってもう一人の印象深い冒険家に「風船おじさん」がいる。覚えているだろうか? 冬も迫った1992年11月23日。ヒノキ風呂を改造したゴンドラに風船を結びつけた「ファンタジー号」を、試験飛行中に出発。翌々日、海上保安庁の巡視機に発見され、帰還を促されるも、それを無視。以後消息不明の鈴木嘉和さん(当時52歳)である。
「風船で空を飛んでアメリカまで行ってみたい」実に夢があり冒険心あふるる野望である。しかし彼はそれを実現するにいたって、計画というものはまるで無く、十分な準備も怠った。そう、まさに彼は身一つの「自己責任」で冬のジェット気流の中に飛び込んだのである。