新しいTERRAZINE

The new TERRAZINE

待合室の空気

病院が嫌いだ。正確には病院の待合室が嫌いだ。病院の待合室ってのは当たり前だけど病人ばっかりだ。だから当然雰囲気が悪い。病院の待合室に居ると気が滅入って、さらに悪くなる気がする。病は気からってやつだ。
鼻腔からの出血、つまり鼻血に3日間断続的に悩まされ、今朝、耳鼻科にかかった。耳鼻科の場合は発熱や悪寒などの症状が少ない分、まだましだが、やっぱり居心地の良い場所ではない。
診察を終え、長椅子に腰掛けて精算を待っていると、3歳くらいの女の子がテレビのスイッチに触り、電源を切ってしまった。子供ってのは親がテレビを見ていても、スイッチを切れば自分に注目してくれるって知っているので、この手のいたずらは多い。母親は「みんなが見てるでしょ」と、しかった。キッチリとしかれるのは珍しいな、とワシは感心してたが、待合室の空気は少し悪くなった。
しばらくすると、またその子がスイッチを触ろうとした。母親はその手をピシャッと叩き、今度は少し大きな声でしかった。待合室の空気はさらに悪くなり、子供は「えっえっえっ」と今にも泣き出しそうになっていた。
「『真珠夫人』なんて入れてるから、消したんだよねー」とワシが言ったら、待合室に笑いが起こった。じいさんがワッハッハと大きな声で笑っている。子供も釣られて笑った。おばあちゃんが子供にアメをあげた。なぜかワシにもくれた。少しだけ待合室の空気が良くなった気がした。
「てらじさーん」会計の女性がワシを呼んだ。「お薬代込みで4960円です」 今度は財布から鼻血が出そうだった。