新しいTERRAZINE

The new TERRAZINE

「優先」に慣れきった障害者が傲慢になるのは、そのような隔離社会しか知らずに育った環境の問題

MSNとの提携を解消し、「毎日.jp」として再スタートした毎日新聞ニュースサイト。その中でMSNと提携する前から「特別に」独立運営されているのが、ユニバーサルデザインバリアフリーの情報ページ「ユニバーサロン」。その名の通りバリアフリーを目指した運営をしており、編集長の岩下恭士氏も全盲だ。しかし障害者向けだからと言って特別なことはしていない。不必要な広告や虚飾、flashを排除し「普通に見やすい」サイト作りを行っている。だから健常者のワシにも見やすく、毎日重宝しているサイトである。
そのユニバーサロンのフリートークというコーナーに、岩下恭士氏による「障害者の傲慢」というタイトルのコラムが掲載されたので紹介する。

JR錦糸町駅前の墨田産業会館で開かれた視覚障害者のための総合展示会サイトワールドの11月2日の坂村健氏の基調講演会場でのことだ。開演15分前から既に満席で、立ち見が出る状態だった狭い会議室に入ろうとした視覚障害の参加者が席がないことに腹を立ててガイドヘルパーが座っていて、視覚障害者が立たなければならないのはおかしい」と怒鳴った。スタッフが途方にくれていると、近くに座っていた主催者の一人(彼自身、70歳を超える視覚障害者)が席を譲って騒ぎは収まった。
視覚障害者向けのイベントなんだから、当事者が最優先されて当たり前」という当人の主張も分からないではない。しかし、ガイドヘルパーや付き添いの家族の中には決して若くない人も多く、それでも中には進んで立ち見を選んだ人もいるのだ。しかも参加費無料のイベントで、言いたい放題というのはどうかと思う。ちなみに僕自身は点字で取材メモを取る関係で、かろうじて見つけた最前列に席を占めたものの、普段一般のITイベントなどでは満席で立ったままメモを取ることもしばしばだ。そんな有料のイベントでも席がないことで参加者が主催者にくってかかるような光景に出くわしたことはない。
(中略)
「専用」=「優先」に慣れきった障害者が傲慢になるのはかれ個人の責任というより、そのような隔離社会しか知らずに育った環境の問題と言えるかもしれない。ユニバーサロンにもときおり、まるで出前か何かを注文するように相手の事情も考えない横柄な取材依頼の電話やメールをよこす障害者がいる。障害を持つ同胞として、こういう社会常識のない障害者を残念に思う。正当な権利の主張と傲慢を取り違えないでほしい
ps, 腹を立てて主催者に席を譲らせた視覚障害者氏だが、同行したカメラスタッフの話では講演中しばしば居眠りをしていたそうだ。

障害者の傲慢 - ユニバーサロン トーク 11月5日

傲慢な性格ってのは、甘やかされた環境で作られる。それは障害者に限らない。健常者の場合は社会に出れば、それなりに常識を身につける。しかし障害者の場合、そもそも社会に出る機会が制限されるため、常識を学ぶ機会も限られる。また、社会に出たとしても「間違った理解者」によって特別扱いされると、それが当たり前だと思ってしまう。そうすると人格面でも「障害者」になってしまうのだ。
人は誰もが、誰かの助けを借りなければ生きられない。障害を抱えている者はなおさらだ。それなのに何故自ら障害を増やすような真似をしてしまうのか。それこそが障害の根の深さなのだろう。