新しいTERRAZINE

The new TERRAZINE

アメダス、初めて改良 気温10秒刻み、最大瞬間風速も

アメダス」として知られる地域気象観測システムが74年の観測開始以来、初めて改良される。現在は気温や風速を10分間隔で観測しているが、気温は10秒刻みになり、風速は常時観測して最大瞬間風速がわかるようになる。よりきめ細かな気象データがそろうことで、熱中症対策や突風監視が充実しそうだ。
気温は10分違うと1度程度は違ってくる。ここ数日の猛暑で各地の最高、最低気温が話題になっているが、こうした記録がより正確にわかるようになる。
防災上さらに重要なのが最大瞬間風速。10分間平均の風速の1.5〜2倍を記録することもあり、大災害をもたらしかねない突風の監視体制が一気に充実する。
新型アメダスで観測した最大瞬間風速の記録を活用し、気象庁は10年度にも突風予測を出す準備を進める。記録をもとに各地の風の特徴を分析。リアルタイムで入る観測データと、現在整備を進めている気象ドップラーレーダーを組み合わせて精度を高め、10分刻みで1時間先まで出せるようにする計画だ。
国内では最近、突風被害が相次いでいる。昨年11月に北海道佐呂間町の竜巻で9人が死亡し、同年9月には台風13号に伴う竜巻で宮崎県で3人が亡くなった。05年12月には山形県のJR羽越線で突風が吹き、特急が脱線して5人が死亡している。

http://www.asahi.com/science/update/0813/TKY200708130303.html

えー? 今まで10分間隔だったの?!
って感想がほとんどじゃないんだろうか。紛らわしいが、今でも観測そのものはリアルタイムで行い、1分値として記録、10分おきに集信している。それをリアルタイムに集信しようって話だ。

アメダスのネットワーク

では、アメダスのデータは、どのようにして収集されているのだろうか。これは日経ITproの連載『ネットワークの裏側を見てみたい』に詳しい。

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20061219/257338/ph01s.jpg
NTTのINS64のDチャネル16kbpsをデータ通信に使っている。あまりの低速回線に、記者も間違えるほどだ(笑)気圧・気温・風・降水の4要素全部でも、それほど大きなデータ量ではないので、これで十分なのだ。
写真を見ても、ただの「電信柱」にしか見えないだろう。ハイテクっぽいものを想像していた人はがっかりすること請け合いだ(笑)観測の仕組みそのものも、風は見ての通り風車ではかってるし、雨量は「ししおどし」ではかっている。(4がししおどしの部分でシーソーのようになっている。これが一回「カタン」と傾くと0.5mmの雨量ってわけだ)
http://www.okinawa-jma.go.jp/nakou/airport_kansoku/kansokukomoku/uryou/nakami.jpg
http://www.okinawa-jma.go.jp/nakou/airport_kansoku/kansokukomoku/uryou/uryou.htm
「アメダスの分解(?)解説記事とか欲しいw」(はてブコメントより)とのことだが、どうせなら直接見た方が面白い。気象庁では夏期広報行事として「お天気フェア」を開催している。観測機器はもちろん、話題の「緊急地震速報」のデモも行われると思うので、近くの気象台に遊びに行くとよいだろう。
鹿児島地方気象台では鹿児島県や国道事務所と共催で「http://www.fukuoka-jma.go.jp/kagoshima/event/pc.html」を8月18,19日に開催する。「思い出の天気図」もバージョンアップして、当日の天気と4要素(鹿児島市のみ)も一緒に印刷されるようにした。暇だったら来てくれ。

気象ドップラーレーダーによる突風予測

気象庁が今、もっとも力を入れているのがこれだ。これまでのレーダーは10分おきの雨域と強度、エコー頂高度(雨雲の高さ)しか分からなかった。10分おきのデータを、連続的に追いかけることで、雨雲の動きを追跡することはできるが、風は分からない。
ドップラーレーダーでは、雨粒から跳ね返ってくる電波の周波数偏差を測定することで、風も分かるようになった。これによりアメダスでは捉えられない竜巻のような局地的現象を捉えることができる。
が、ドップラーレーダーには大きな弱点がある。今のレーダーと同じで、晴れてると何も映らない。だって跳ね返るものが無いんだから。当然風も観測できない。だからやはりアメダスによる実測が必要なのだ。
新技術が投入されると、「古いのいらないんじゃね?」という声が当然上がる。かの池田信夫先生ですら「気象衛星あんだから、レーダーいらねーだろ。無線LANの邪魔だし」
とか言っちゃうくらいなのだから。一見原始的で無駄に思える方法が使われているのには、必ずそうでなければならない理由があるのだ。
特に突風予測は飛行機の安全運行に極めて重要な情報になる。地上で竜巻が起きても、建物はぶっ壊れるものの、人死にはあまり出ない。しかし飛行機が墜ちれば即数百名単位で人名が失われることになる。ドップラーレーダーアメダス観測の強化による、突風予測の充実に期待したい。